いきなりですが、料理初心者の皆さんに質問です。
「塩 少々」
これ、どのくらいの量だと思います?
塩や胡椒で使われる「少々」という表記には、「親指と人差し指でつまめる量」という定義があります。
しかし実際には指の太さやつまむ面積によって量が変わると思いませんか?
このように、巷で溢れるレシピには、個人の判断に任せる曖昧な表現が多くあります。
これは、人によって「薄味が好き」や「濃い味が好き」などの嗜好がありますから、「好みの味に仕上げてね!」ということなのです。
しかし、料理初心者にとって、この曖昧な表現がつまずくポイントであるのも確か。
この記事では、レシピで目にする曖昧な表現の対処法や、誤解されやすい用語を解説していきます。
また、このブログに掲載しているレシピは、分りずらい曖昧な表現は極力使わないようにしています。
調味料の量を表す言葉
塩や胡椒に使われる「少々」「ひとつまみ」「整える」「適量」「適宜」の表記。どれが一番少なくて、どれが一番多いのかも分からないのに、レシピでは解説されません。
少々…無視してOK
「少々」は、親指と人差し指でつまんだ量を言います。
ところが、指の太さやつまむ面積って人によって違いますよね?実際に計ってみると、0.1gの人もいれば、0.8gの人もいるのだとか。
人によって8倍もの開きがあると、完成した料理の味がかなり違うものになってしまいます。
でも、考えてみて下さい。「少々」がわずか0.1gの人もいるんです。もはやゼロに等しい量の塩を振ったところで、よほどのグルメさんでなければ違いなんて分かるわけないですよね?
つまり、「少々」は無視してもいいんです。入れなくて大丈夫です。このブログのレシピでも「少々」という表現は使いません。
ひとつまみ…小さじ1/5(1g)
個人的には、「ひとつまみ」ほど厄介な表現は無いと思っています。
親指と人差し指と中指の3本でつまんだ量が「ひとつまみ」という定義です。
「少々」では2本だった指が3本になることで、人差し指と中指の間の溝が産まれます。この溝が深ければ、より多い量の塩がつまめてしまうわけです。
「少々」では指の太さとつまむ面積によって量に個人差がでていましたが、「ひとつまみ」では、指の形も量に影響してしまいます。
その為、実際に計量した人の量を集計すると、0.4g~1.5gと、1g以上の差が。
1gの塩というのは、その料理の味を根本から変えてしまう量であり、明確な基準は必要不可欠です。
実業之日本社の「レシピの書き方」によると、「ひとつまみ」とは小さじ約1/5、約1gとあります。
レシピを作成する人の参考書が「約1g」と定義しているわけですから、レシピ通りの味に仕上げたければ、面倒でも計って使いましょう。
このブログのレシピでは、「ひとつまみ」という表現は使いません。
整える…基本的に無視でOK
レシピの完成間近に「塩胡椒で味を整える」と表現されることがあります。
これは、「味が薄かったら、皿に盛る前に塩胡椒で調節してね」ってこと。
つまり、「味見をする」という隠れた工程があるのです。
一度濃くなった味を薄味に戻すことは不可能なので、整えるときは「極少量を足して味見」を繰り返さなければなりません。
世の中のレシピは、ファミレスの料理のように、万人受けする味付けになっているものがほとんどです。多くの場合、「整える」と表記されていても、その必要はないのかもしれません。
このブログのレシピでは、「整える」という表現は使いません。
適量…調味料に適量があるレシピは避ける
「適量」という言葉に泣かされた料理初心者って、意外と多いと思います。そもそも、「適量」が分からないからレシピを見ているわけです。
ところが、世の中の様々なレシピでは、この「適量」の2文字が実に多く使われています。
この「適量」を大きく3種類に分けてみました。
①具材に対する適量
②調味料に対する適量
③食事時の適量
「①具材に対する適量」を説明するのに最適な例は「冷やし中華」です。麺が見える程度に具材を盛り付ける人もいますし、麺が見えないくらい盛り付ける人もいます。ちなみに僕は後者で、具材で完全に麺を隠します。
また、ハムは少な目で玉子は多めがいいなど、何をどのくらい盛っても成り立つ料理なので、必要な具材の量も人によって変わってきます。
つまり「①具材に対する適量」は、「食べられる範囲でお好きな量をどうぞ」ということです。
「②調味料に対する適量」はどうでしょうか。これは味噌汁を想像していただくと分かりやすいです。
味噌は地域や家庭によって、種類も違えば濃さも違うもの。その家庭の味が存在しているのです。
ですので、レシピで味噌の種類や量を指定できません。味噌汁のレシピに「米味噌30g」と表記されていても、赤味噌文化の東海地区には対応できませんよね?
つまり「②調味料に対する適量」は、「普段使っているものを普段使っている量だけ使って」ということです。
最後の「③食事時の適量」は、餃子をイメージしてください。多くの人は小皿に醤油とお酢とラー油を入れ、付けダレを作りますよね?
この付けダレ、毎回計ってます?キッチリした性格の人は、毎回同じ味になるように計っているかもしれませんが、多くの人は適当ですよね?
そうめんのつゆなども、このパターンですね。
つまり「③食事時の適量」は、「料理本体の味には影響しないから自由にどうぞ」ということなのです。
このブログのレシピでは、①②③どのパターンであっても、「適量」という表現は使いません。
適宜(お好みで)…なくてもOK
漢字が「適量」と似ていますが、よく見ると「適宜」を使っているレシピがあります。
レシピによっては「お好みで」と表記される場合もあります。こちらの方が分かりやすですね。
そのままの意味で、「あってもなくても構わない」という意味です。
例えば、冷やし中華の紅しょうがなどですね。
このブログのレシピでは、「適宜」は使わず、「お好みで」の表現に統一しています。
だしに関する言葉
「だし」「出汁」という表記も、料理初心者は困るらしいのです。困惑ポイントを解説していきましょう。
だし…かつおだしの事
だしと言っても、かつお・昆布・いりこ・鶏がら・コンソメなど、いろいろあります。
ただ「だし」とだけ書いてある場合は、「かつおだし」だと考えて下さい。かつお以外のだしの場合は、その都度指定される場合がほとんどです。
1カップ…200cc
だしの量でよく使われる単位が「カップ」です。カップと言っても、普段使ってるコーヒーカップや紙コップのことではありません。
料理に必要な「計量カップ」が販売されていますから、必ず揃えておきましょう。百均でも購入できます。
1カップは200ccです。ちなみに、お米を計るカップは180ccですので、注意して下さいね。
だしの素…パッケージの記載通りに水で溶かす
できれば、鰹節から取った方がGood!
だしの素とは風味も旨味も比べ物にならないくらい良いです。
ただ、だしを取るのは意外と面倒。家族で食べる分ならば、だしの素で代用するのもアリでしょう。
だしの素は必ず水に溶かして、液体にしてから使ってくださいね。水に入れて10分程度放置しておけば、勝手に溶けます。
だしの素や水の分量は、製品によって異なるので、パッケージの分量の通りに溶かしてください。
麺つゆに関する言葉
最近では麺つゆを使ったレシピも増えていますね。冷蔵庫に入っている麺つゆ、あなたは正しく使えていますか?
〇倍希釈方法…最終的な量が〇倍になる
希釈タイプの麺つゆを使ってそうめんを食べるとします。
2倍濃縮タイプの麺つゆ100ccを器に入れました。水はどのくらい入れればいいでしょうか?
A・2倍の水(200cc)を入れる
B・同量の水(100cc)を入れる
「2倍」という言葉だけを見て、麺つゆの2倍の量の水を入れてしまう人がいますが、正解はBです。
「2倍」とは、「最終的な量を2倍にして下さい」という意味なので、麺つゆ100ccに対して同量の水100ccを足して、200ccにするわけです。
同じように、3倍濃縮タイプならば、「最終的な量を3倍にして下さい」なので、麺つゆ100ccならば水200ccです。
レシピと濃縮倍数が違う…「レシピ/手元」で計算
レシピで3倍濃縮の麺つゆ60ccとあるのに、手元に2倍濃縮の麺つゆしかない・・・。そんな時は簡単な計算式を覚えておけば、すぐに必要な量が計算できます。
現在市販されている希釈タイプ麺つゆは2倍濃縮~5倍濃縮だと思います。
麺つゆの中には、希釈しないストレートタイプもありますから、計算の都合上、ストレートタイプは「1倍濃縮」とします。数字だけ抜き出して計算してください。
そして、計算式は
レシピの濃縮倍数/手元の濃縮倍数
です。
「レシピで3倍濃縮の麺つゆ60ccとあるのに、手元に2倍濃縮の麺つゆしかない」ならば、計算式に当てはめて3/2となります。つまり、手元にある2倍濃縮の麺つゆを90cc使えばいいんですね。
水溶き片栗粉…片栗粉と水1:2
あんかけを作る際に必ず出てくるのが「水溶き片栗粉」です。片栗粉を水で溶いたものが水溶き片栗粉なのですが、「水溶き片栗粉・大さじ3」って…
片栗粉と水の分量は?
って、戸惑いませんか?世の中のレシピって、「水溶き片栗粉の作り方」を省略しているものが多いんですよ。
特に指定がなければ、片栗粉と水1:2でOKです。
片栗粉と水はすぐに分離してしまうので、使う直前にもう一度混ぜましょう。
具材に対する水の量に使われる言葉
鍋で煮込む際に、水(またはだし)をどれぐらい入れるか、というお話しです。
鍋の大きさは家庭によって異なるので、使う水の量も当然異なります。ですので、どの鍋でも対応できるよう、「ひたひた」「かぶるくらい」「たっぷり」という表現を用います。
このブログのレシピでは、水の量まできっちり計量してレシピにしてますので、このような表現は使いません。
ひたひた…具材が少し出ている状態
具材の頭が少し出ている状態を、レシピでは「ひたひたの水」と言います。
野菜の煮物や魚の煮つけに使われる水加減ですね。水から出ている部分の具材は煮えないので、対流させる為に「落し蓋」が必須になります。
かぶるくらい…具材の高さと同じ水位
具材が完全に水に浸かった状態を「かぶるくらい」と表現します。鍋に入れた具材の高さと水位が同じになる、今まさに具材が完全に水に浸かった!という量ですね。
ゆで卵を作る時などの水加減です。
たっぷり…具材より数センチ上まで水を入れる
具材より数センチ上に水位がある状態を「たっぷり」と表現します。カレーやシチューなどの煮込み料理に使われる水加減です。
味噌汁などの汁物も、「たっぷりの水」と表現されることがあります。
調理過程に使われる言葉
一晩寝かせる…冷蔵庫で6~8時間
冷蔵庫で味をなじませることを「寝かせる」と言います。「1時間寝かせる」のように、レシピでは寝かせる時間も記載されているのが普通です。が、「一晩寝かせる」もよく登場します。
「一晩」とは6~8時間のことを言います。この「寝かせる時間」は調理時間に含んでいないレシピが多いので注意して下さい。
粗熱を取る…手で触れる温度、40℃
手で触れるくらいまで冷ますことを「粗熱を取る」と言います。完全に冷ましてはいけない場合が多く、お風呂の温度ぐらいになったら、次の工程に進みましょう。
ラップをふんわり…隙間を開けるのはNG
レンジで温める際に、蒸気でラップが切れてしまうのを防ぐ為の表現です。
蒸気で膨らんでもいいように、少したるませてラップをかけます。レンチンが終わると、たるませたラップが蒸気で膨らんでいるのが正解です。
少し隙間を開けたり、ラップをただ上に乗せるだけといった、蒸気が逃げるかけ方は間違いなので注意しましょう。
水にさらす…たっぷりの水につけておく
具材のあく抜きや変色を防ぐ為に、たっぷりの水につけておく事を言います。
具材によっては塩水や酢水の場合もあります。
きつね色…油揚げの色
揚げ物や焼き物でよく使われる言葉に「きつね色になるまで焼く(揚げる)」があります。
きつねなんか見た事もないし、同じきつねでも種類によって色は違いますよね。
ですので、「きつね色」の解釈も人によって様々。
「きつね色」で画像検索をすると、どんな色が表示されると思いますか?
茶色系であるのは間違いないのですが、黄色に近いものから、焦げ茶に近いものまで「きつね色」と呼ばれるようです。
個人的には「油揚げの色」と解釈しています。「きつね」ですし(笑)
「料理したことないから油揚げの色なんて分からないよ!」って人は、いなり寿司でもいいですし、なんならマクドナルドのポテトの色をイメージしても大丈夫です。
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